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25回新素材・新技術研究会

 

1.日時  平成14125() 13:3017:00

2.場所  愛知産業()会議室 

3.出席者 43

4.講演概要

4-1.「新しい浸炭技術・真空浸炭」  元・株式会社日本ヘイズ会長 杉山道生氏

 ソルトバスによる熱処理に携わっていたが、ソルトバスの環境対策から米国の真空熱処理技術を導入、()日本ヘイズを設立した。その後、ガス浸炭に代わる真空浸炭に取り組んだ。当初少量生産では問題ないが、多量生産になると煤が発生することが問題となった。煤と浸炭ムラの防止に取組み、炉構造の改良と浸炭ガスを飽和炭化水素から不飽和炭化水素(アセチレン)に変えることで煤の発生を防止する方式を開発した。真空中の加熱は省エネルギーであり、酸化が防止され、酸化物や異物などを蒸発揮散除去し、浸炭ガスと反応しやすい活性な表面肌とする。真空浸炭は、オーステナイト化・浸炭・拡散、焼き入れ、それぞれのプロセスに最適な加熱雰囲気の中で処理が行われる。反応性の高い三重結合の不飽和炭化水素を、微量低圧で使用する技術を確立し、これにより煤の問題を根本的に解決すると共に、更に高品質の浸炭を低コストで行うことに成功した。これによりガス浸炭の問題点が、大幅に改善され、高品質の浸炭処理が安いランニングコストで、高い安全性と快適な作業環境のもとで行える様になった。今後の真空浸炭は、バッチ炉から連続炉への進化が必要と考えている。

 

4-2.「損傷事故に学ぶ」     ()日本熱処理技術協会専務理事 深川宗光氏

 工業の発展は失敗の積み重ねで築き上げてきたものと言っても過言ではなく、現在、失敗学会の設立が提唱されている。これに先立って社内で行った「失敗を如何に伝承するか」の試みについて紹介された。A4版1ページに纏められた事例(トラブル事例シート)を、材料・構造、腐食、ボイラ、振動、トライポロジ、熱・流体データシリーズに区分し、更に検索語として、製品、現象、原因、環境、部品に区分されており、それぞれのデータシートを検索することができる。これらの検索語は更に細分されて検索を容易にしている。それらのデータの中で、「大型ギアの水素脆性割れ」の例を取り上げて詳細な説明があった。これらのデータは現在社内のイントラネットで検索可能になっている。

 

4-3「会長談話;水素エネルギーの利用と水素吸蔵合金」

            新素材・新技術研究会会長 東京工業大学名誉教授   田中良平氏

水素は環境性に優れたエネルギーで、その有効利用のためには水素を安全且つ高密度に貯蔵することが必要で、水素吸蔵合金として各種合金が開発されている。また、高圧で水素を貯蔵するボンベとして、軽量のFRPが使用され、現在35Mpでの貯蔵が可能で、将来75Mpに高圧化される可能性がある。水素利用の例として、最近政府がリース使用を始めた水素自動車、水素燃料電池等について解説された。