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生産技術、製品開発に関する調査並びに技術情報の提供、新素材、新技術、環境問題等に関する調査及び情報提供
中小企業振興のための施策並びに情報技術支援を行う公益財団法人国民工業振興会

中小企業助成事業(特別講演会)

平成15年度特別講演会

 中小企業に対する各種助成事業について


日時   平成15年11月10日13:30〜16:30

場所 「品川区立中小企業センター」2階大講習室

出席者  80名

1.挨拶 「東京商工会議所の対応について」 

   東京商工会議所 副会頭 中小企業委員長
   公益財団法人国民工業振興会 
      理事長 井上 裕之氏

 中小企業を取り巻く環境はなかなか厳しいものがあり、円高、高い失業率、そしてまだデフレが解消されていない状況にある。東商としては需要回復、景気活性化を軌道に乗せて欲しいと考えている。企業の99.7%、雇用の7割を占める中小企業への支援が15年度で1,295億円、16年度予算で1,446億円と極めて少ない点についても増額要望をしたいと考えている。個別政策としては、金融問題でのセーフティネツトの拡充、返済能力に劣る中小企業向けのマニュアルの改定を要望している。更に、東京都のローン担保証券、社債担保証券があり、動産を担保にした借りだしは来年には日の目を見るのではと期待している。

 一方、中国、東アジア諸国の台頭が問題であり、これに対抗する中小企業に対する資金援助では政府のSBIR補助金制度もあるが予算が平成15年度で280億円程度であるが、米国では1400億円程度と言われている。東京都でも予算を組んで貰っているが、援助が重要であるので枠を増やして貰うように御願いしている。また、知的所有権取得への補助体制ができており活用されている。

東商としては経営状態のチエックシステムを立ち上げ既に500社が申し込んでいる。テクノネット事業、産学連携、勇気ある経営対象を表彰している。最後に、日本経済を支えている中小企業をために、中小企業再生協議会を3月から始めており、10月からは4名体制に増強して進めており、専門家チームがどのように再生を図ったらよいか相談している。再生にも弁護士費用として500万円程度といわれており、それでも20-30%しか再生できず倒産する事が多いので、その前の段階で再生協議会に話を持ち込んで頂き、専門家が指導する機構である。自助努力とともに、新しい技術開発によって、次の時代を担うことを強力に進めて頂きたい。



2.講演「技術力で挑戦する中小企業に向けて」 
  
   経済産業省中小企業庁 経営支援部
      技術課長   脇本 真也氏

 ものつくりの中小企業についてはまだきびしい状況にありデフレは継続しているが、日本経済の規模は大きく、内需はまだ大きいと言える。 米国では80-90年代、労使協調や従業員の高い忠誠心、持ち株制度、アウトソーシング、サプライチェンマネージメント、ダウンサイジング等各種の経済改革でベンチャービジネスを輩出、製造業の復活を果たした。一方、日本では90年度からまじめな技術開発の努力を怠り、これがじわじわと効いて来て現在に至っている。法律の名称に「技術」の言葉を探すと、昭和年代では5件、平成年代に入って11件あった。平成に入ると法律を作らないと社会が進歩しない状況となっており、法律は社会の発展と反比例するようである。

日本のSBIRの技術補助金は平成15年度約280億円で、米国では約1400億円と言われている。平成16年度のSBIR予算は300億円を超える様にしたいが、なにしろ中小企業庁の予算全体が1,380億円であり中小企業向けには限界がある。米国でSBIRが90年代に成功した要因は、高額の補助金のみならず、大学で開花した技術の移転に成功したことによる。当時、日本の大学にはそのような雰囲気はなく、金を稼ぐ学問は冒涜であるとの風潮があったが、米国の大学は産業界と一体であり、社会に学問の成果を還元する考えが基本的にあった。そのため大学の研究者を産業界に取り込む事が必要で産学連携を強調している。TLOが各大学に作られており、産業への技術移転に熱心になっている。大学からベンチャー企業を立ち上げるばかりでなく、技術は中小企業の中に多く蓄積されているので、既存の中小企業の中に残っている技術の開発が重要である。中小企業が産官学連携に取り組んだ効果として新しい知識の吸収、新しい技術の確立、新しい人的つながりを効果として挙げている。大学とのつきあいで人材、知識を確保することが重要であるが、付き合うだけで起業するのは無理がある。トップシェア製品の技術レベルが、それほど高度な技術でなくても良いことに注目すべきで、大学と付き合いにより、新しい技術を吸収しながら、自分の技術を磨くことが重要である。優良企業は、経営者の決断により、不採算部門から撤退し、経営資源を得意分野に集中させて新しい部門をのばしており、優良企業のポイントとしては、企業が「組織が学び進化する能力を」持っているか、経営者が「変化を先取りする戦略眼」を持っているか、経営者が「従業員にビジョンを与え、士気を鼓舞できるリーダーシップ」を持っているかが問われている。

平成16年度のSBIRとして、新しく「中小企業・ベンチャー挑戦支援事業」を予算要求している。技術開発とともに、起業に向けた支援をするもので、1年目は技術開発費1,500万円(2/3補助率)、2年目は知的財産出願、試作品、展示会等の費用で500万円(1/2助成率)である。2年目の補助率が低いのは、リスクが低くなると補助率を下げる基本的な考え方が財務省にあるためで、総額42億円を申請している。更に、16年度から試験研究費の税額控除制度を改定して、大企業には研究費の総額に対して一定割合の税率控除制度を創設、中小企業には既に制定されている税額控除率を3年間の時限措置として13%から15%に引き上げている。また、知的財産立国に向けた重点施策として、「特許裁判所」機能の創出等多くの施策が検討されている。



3.講演2「施策活用のヒント」

 (財)金属材料研究開発センター
   専務理事   小島 彰氏

 補助金施策の広報について「体験的施策広報のポイント」として、今までの経験から、総論よりも具体的な案件での補助金広報が好ましいこと、匿名でなく固有名詞での補助金獲得企業の発表がなじみやすいこと、具体的な助成金額を表示する方が印象強いこと、申請時期に余裕(3ケ月程度)をもった広報が良いこと、官報・ホームページ等での広報のありかたの再検討が必要であること、中小企業者と話し合いながら政策に反映する必要がある等の意見が述べられた。また、申請者側の「施策活用のヒント」として、数多くありすぎる施策の選択が必要であること、欲しい補助金は何か明確にすること、各種支援機関の積極的な活用をはかること、オンザジョブトレーニング的に作文技術を磨いて、読んでもらえる申請書の書き方が重要であること、奥の深い施策の活用、情報システムの活用等、申請者にとって大変有益なヒントが解説された。

 昨年度に引き続き今年は大幅に登録大学教授名が増加した「材料・加工関係の大学等研究者データ」が配布され、産学連携を検討する場合に役立つデータが報告された。

更に、「インターンシップデータブック」が配布された。これにはインターンシップを活用したい大学名及びインターンを受け入れる予定のある企業名と受け入れ実績、受け入れ予定数等の情報が記載されていて、大いに活用したいデータである。



4.講演3「東京都の助成事業の概要について」

  東京都産業労働局 商工部 創業支援課
   技術連携担当副参事 朝倉 守氏  

 「公社ガイド」により東京都中小企業振興公社の中小企業支援事業の概要を説明された後、東京都の助成事業の概要について解説された。既に平成15年度の申請は全て終了しているが、東京都では、商工部創業支援課(創造的技術開発、産学公成長企業発掘支援、外国特許出願助成)及び経営革新課(経営革新事業費)及び中小企業振興公社(新製品・新技術開発、共同開発、創業支援、市場開拓支援、ISOシリーズ取得)の各種の助成事業を実施しており、これらについて事業内容、申請資格(助成対象者)、助成対象経費(助成限度額、助成率)、助成内容等の概略を解説された。

助成金申込みから助成金の交付までの流れは概略次の通りである。申込みに際してはその助成金の目的、主旨を良く理解の上申し込む事が重要である。書類審査(一次審査)が終了後、面接審査を行う(面接審査が省略されている助成金種類もある)。審査会で採択企業を決定した後、採択企業に対して事務手続きの説明会を開催し、助成事業遂行に際しての注意事項を説明し、実際の事業が開始される。秋頃(10-11月頃)に遂行状況報告を提出し、それに基づき中間検査が行われ、予定通り事業が進行しているかが検査される。1-2月に実績報告を行い、完了検査が行われ、予定通り事業が実施され、予定対象の経費が使われているかがチェックされた後、助成金交付となる。更に、事業終了後5年間に亘り実施状況報告書を提出することが義務づけられている。税金を使用して助成しているので、どのように助成金が活かされているかを追跡調査される。また、研究開発助成金については、収益納付制度が制定されており、その助成事業で利益を得た場合は利益の一部を納付することになっている。更に、原則として助成事業で取得した設備・財産は5年間処分が出来ないことになっている。

                                     以上

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